ただ今、政略結婚中!
荷物検査の男性に見られても、涙は止まらなかった。


搭乗を待つ間、少し落ち着きを取り戻した私は、柱の隅に移動して、バッグの中から携帯電話を手探りで取り出す。


そして、電話帳からエステルの電話番号を探してかける。


『やっと行動に起こすのね?』


電話に出て、最初の言葉がこれだ。


エステルが憎い……。


「本は出版しませんよね?」


『ええ。刷った分は大損害だけれど、それくらい隼人の為ならなんでもないわ。じゃあ、お幸せにね?』


プツッと電話の切れる音がした。


幸せ……?


私に一生、幸せがやってくることはない。


無神経な人……隼人さんは彼女で本当に幸せになれるのかな……。


その後、イスに力なく座ると搭乗するまでずっと俯いていた。


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