ただ今、政略結婚中!

愛のありか

「じゃあ、区役所は途中で寄って行きましょう」


「うん……」


麗香がマンション近くの区役所に行くように、タクシーの運転手に伝えてくれる。



******



離婚届に自分の名前とハンコを押して、丁寧に折ると封筒に入れた。


ハンコも手元になかったから、文房具屋さんにも寄った。


宛名の住所を書く時、手が震えて何度も中断してしまう。


その動作を見守っていた麗香は見かねて住所を書いてくれた。


「本当にいいの?隼人さんにちゃんと説明しないでいいの?」


封筒に糊を付けて封する時、麗香が聞いてくる。


私は何も言えずに、しっかりと糊と紙を接着する作業に集中しているフリをする。


「このままじゃ、亜希。あんたがダメになっちゃうよ」


「……ダメにならない。大丈夫。……男なんてたくさんいるんだから、また恋するよ。いい人がいたら紹介してね」


簡単に恋が出来たらどんなにいいのだろう……。



< 430 / 566 >

この作品をシェア

pagetop