ただ今、政略結婚中!

一夜を共に……?

連れて行かれたのは近くのお寿司屋さんだった。


お寿司屋さんに連れて行かれたのは意外だった。


カウンターに座ると、向こう側にいる日本人の板前さんが隼人さんに挨拶をする。


隼人さんのなじみのお店のよう。


板前さんと隼人さんは楽しそうに話をしている。


黙って会話を聞いていると、注文を済ませた隼人さんが私を見る。


「なぜ黙り込んでいるんだ?結婚式の日の勢いはないのか?」


「え、なんでお寿司屋さんなんだろうと思っていたんです」


「お前の顔を見たからに決まっているだろう?」


お前の顔=日本人=お寿司?


「ここはニューヨークで一番うまいんだ」


そう言われて私は頷いた。


なんだか、結婚式の日とは違って優しく見える隼人さんに調子が狂う。


割り箸を2つに割ってくれたり、小皿にお醤油をさしてくれたりと、甲斐甲斐しく世話をしてくれると、結婚式での隼人さんは別人のように感じてくる。



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