きみとぼくの、失われた時間


「カラオケに行っても良かったんだぞ」

俺は秋本に苦笑する。

秋本のことだからきっと俺に気を遣って帰宅にしたに違いない。


俺に構うことなく楽しんできてもらった方が、此方としても気が楽なんだけど。俺は居候の身分なわけだし。

寧ろ、叩き起こしてくれるならカラオケで発散してきてくれた方が俺も有り難かった。
 

「申し訳ないじゃない…、あんた…、外出できないのに」
 

自分だけ遊びに出掛けるなんて、申し訳なさ過ぎると彼女はポツリ。

それは仕方が無いと割り切ってるから大丈夫、そう口癖のように言ってるのになぁ。

秋本は仕事をしている身の上、外では沢山ストレスを感じてるだろうから、是非とも仕事や俺のことを忘れて楽しんできて欲しかったんだけど。
 

今度女子会があったら気兼ねなく行って来てくれよ、俺の言葉に却下と彼女。
 

「ヤなもんはヤなのよぉ」


蚊の鳴くような声で呟く秋本は、それにしてもハメを外したと呻く。

これもそれも昨日、教頭がまた見合いの話を持ってきたからだと愚痴った。

「見合い?」

パチクリと目を丸くする俺は秋本に見合いをするのかと質問を重ねた。

まさか、大袈裟に声を出して嘔吐感を思い出す秋本は見合いなんて絶対にしないと、嘔吐に堪えつつ不貞腐れ面を作った。


教頭がなにかと見合い話を自分に持ってくるのだとブツブツ。

なんとなく面白くないと思いつつも秋本もアラサー、身を固める時期に差し掛かっているんだろうな…、と納得した。
 

「見合いかー。秋本も結婚しろってことなんじゃね?」

「嫌よ。私は結婚なんてしないわ。したがって見合いもしない。するもんですか」
 
  
おいおい、お前、一生独身でいるつもりかよ。

俺のツッコミに、それも嫌だと秋本。

ゴロゴロと布団の中で二日酔いと格闘している。我が儘な奴だな、結局どっちなんだよ。
秋本曰く、彼氏もいないそうだし…、今は仕事一筋なのか?
 
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