きみとぼくの、失われた時間


「俺さ。絶対に戻るから…、自分の生きていた時代に。
そしてお前等と大人になる。約束する。お前等とアラサーになるから…、こんな風に三人でアラサーになろうな」
  

姿見を指差して俺はニッと頬を崩した。

前方を見た二人は目を真ん丸お月さんに見開き、んでもってどっか泣きそうな、仕方無さそうな笑みを浮かべて頷いてくれる。

向こうの鏡面に映っているのは反転した遠藤と秋本、んでもって俺。

中学生はそこにはいない。

大人になった半透明の俺がそこにはいる。

顔立ちも骨格も背丈も成長した、未来の俺。


背丈は遠藤と比べて高いのか低いのか分からないけど、パッと見秋本よりかは高そう。安心だ。

それにしても案外普通だな。
もっと格好良くなるんじゃないかって期待していたけど、現実は甘くないみたい。


だけど俺はこの姿が、顔が、自身が好きだよ。

「やっとお前等に追いつけた気分」おどけると、「これが本当の光景だろ」遠藤が苦し紛れに笑う。
 

「秋本。良かったな、坂本の成長が見られて。気分は?」

「煩いわね。最高に決まってるじゃない。私はこいつのこと、ずっと好きだったんだから」


「わぁお素直」遠藤の茶化しを右から左に受け流す秋本は、軽く目元を指で押さえて小さく綻んだ。

 
「約束だからね坂本。私達と大人になるのよ」


うん、約束だ。俺は秋本や遠藤と大人になる。なるよ。
 
同級生達と大人になる、同じ時間を過ごす、同じ場所で生きる大切さを俺は学んだから。
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