きみとぼくの、失われた時間


1ヶ月前に失踪事件を起こした、俺、坂本健が発見されて早2週間が経つ。
 

発見されたその日、俺の身柄は一時病院に預けられた。

そこで家族と対面したんだけど、父さん母さんから大泣きされ、兄貴から何処に行っていたんだと怒られ、家族の心配を一身に浴びた。


俺はどうしようもなくて始終流れに身を委ねていた。


気を落ち着けるために一日、病院で休養を取った後、俺は医師や警察から何処にいたんだと事情聴取を受ける。


俺はよく憶えていないと返した。

他に答えられなかったんだ。失踪した日は神社にいて、そこで時間を潰していた。


そこまでは憶えているのだけれど、後の事は…、と言葉を濁すしかなかった。


何時間も質問に対して同じ事を繰り返す、嘘偽りのない俺の態度を真摯に受け止めた医師は、大人達にこう耳打ち。

精神的ショックから一時的に記憶障害を起こしている可能性がある、と。
 

もしかしたら何か大きな恐怖、不安、衝撃に襲われたのかもしれない。

だから無闇に刺激しない方が良い。


 
そう医師が診断を下したため、俺への質問もじょじょに数が減っていった。


尤も、俺の前でそんな判断は下していない。

身内や警察にこっそりと告げていた。


じゃあ何で俺がそのことを知っているか。
病室で狸寝入りしている際、看護師の話を偶然にも聞いてしまったからだ。


おかげさまで身内も殆ど質問はしてこない。

ただ時折、目で質問をしてくるけれど俺自身答えられそうにないや。


だって言えるか?

実は2011年という未来に行っていました、なんて。
 
それこそ身内を不安に貶めるだけだろうから、俺は甘んじて医師の診断を受けることにした。
 
< 260 / 288 >

この作品をシェア

pagetop