きみとぼくの、失われた時間


「坂本、お前に返したいものがあるんだ。俺の家の郵便受けにCD入れただろ? あれ大事なものだろうし、お前に返すよ。ごめんな…、俺、言い過ぎた」


1996年のお前もあのCDを持っているのか。

ははっ、おかしいな。
じゃあ手元に同じCDが二枚きちまうって。

未来のお前に返してもらったのに、お前が持ってるのはなんでだろう。


2011年のあの未来は消えやしない。

有り得た一つの未来だって、俺に教えてくれているのかもしれない。


「いいんだ。あれはお前にやるよ。スッゲェ心配掛けたし…、ずっと探してくれていたんだろ? ありがとな」



相手の気丈が崩れた。

「だって」お前が本当に消えちまったんだ、探さないわけないだろ、探さないわけ…、ごめんを繰り返す遠藤は胸のつっかえが取れたように嗚咽を漏らした。


「うそだからな」


吐いた暴言は嘘なんだと訴え、俺の体に縋る親友。
体を受け止めて、俺は相槌を何度も打った。


自然と視界が潤むのは1996年の親友と仲直りできた安堵感からか、それとも。
  

不在だった保健室の先生が職員室から戻って来る。

見っとも無くすすり泣いている男子生徒二人にすこぶる驚いていたけど、気にする余裕なんてこれっぽっちもなかった。


いつまでも1ヶ月と3週間の時間を経て、仲直りできた喜びを噛み締めていた。
 
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