あたしの彼は『ヒドイ男』
 

俺様な命令に、何も考えずに素直に頷いてしまった私は、今考えても都合のいいバカな女だと思う。

だけどもしかしたら、具合の悪い私に真っ先に駆け寄って抱き上げてくれたり、サラリーマンに言い寄られた私に気づいてくれたり……。

「もしかして、カズもずっと私のことだけ見ていてくれた?」

目の前で不機嫌そうに頬杖をつくカズに聞いてみたら、ハッと鼻で笑われた。

「やっぱりお前、鈍感すぎ」

「なにそれ」

「なんでもない」

ふんとそっぽを向いたカズの耳は、秋の日差しのせいか微かに赤く見えて、私は思わずいつもの言葉を口にしてしまう。

「ねぇ、カズ」

「あ?」

「好き」

「あっそ」

「大好き」

「知ってる」


勝ち誇ったように笑われて、ムッとしながらテーブルについていたカズの手をつねる。

こんなに好きだって言ってるのに、言い返してくれないなんて、やっぱりカズはヒドイ男だ。

そのヒドイ男の左手の薬指には、シンプルなプラチナの指輪。
これからも一緒にいようねという約束の証。
窓から射す柔らかな秋の光を反射する、私の指輪とカズの指輪を見ながら、幸せだなと思った。


あたしの彼は『ヒドイ男』。END

< 74 / 74 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:521

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

モテ男の北原くんは、報われない恋をしている

総文字数/4,540

恋愛(オフィスラブ)10ページ

超短編!フェチから始まる溺愛コンテストエントリー中
表紙を見る 表紙を閉じる
   社内で1、2を争うモテ男の北原は 三つ上の吉野先輩に初めて本気の恋をして 報われない片想いをしている その恋模様を観察するのが私の生きがいだ 「純愛は叶わないからこそ輝くのよ。 見返りを求めない一途さ! 自分の気持ちを押し殺して好きな人の幸せを最優先する健気さ! 努力しても努力しても振り向いてもらえない不憫さ! 今まで散々女にモテ散らかしてきた北原が、初めての本気の恋に四苦八苦する滑稽さ! これがたまらないのよ。わかる?」 あぁ。報われない恋ってなんて尊いんだろう。 .。.:*・゜゚・*:.。. モテ男の北原くんは 報われない恋を している ゚・*:.。. .。.:*・゜ : + : ・
大槻くんの唇はイジワル

総文字数/6,050

恋愛(オフィスラブ)11ページ

超短編!フェチから始まる溺愛コンテストエントリー中
表紙を見る 表紙を閉じる
顔がよくて仕事もできるけど、いつも無気力な後輩の大槻くん。 そんな彼の『完璧な形の唇』をこっそり鑑賞し楽しんでいただけなのに……。 お昼休みのオフィスで、朝の混み合うエレベーターの中で、賑やかな居酒屋の廊下で――。 周囲の目を盗み、猫が鼻先をこすり合わせるような短いキスを仕掛けては、なにごともなかったかのように涼しい顔をする大槻くん。 「このままふたりで抜けて、俺の部屋に行きましょう ふたりきりになれば、ひと晩中、好きなだけキスできる」 そのあまりにも甘い誘惑に、私の理性が音を立てて崩れていく。
24時の秘めごと。

総文字数/7,848

恋愛(オフィスラブ)17ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「仕事も大事だけど、今はお前の方が放っておけない」 神谷先輩が、私を見下ろしながらそう言った 恋人に浮気され家を飛び出した私をなぐさめてくれたのは 尊敬する職場の先輩で 悪い男だという噂の絶えない神谷先輩 彼のタバコの煙と甘い香水が 私の罪悪感を麻痺させる

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop