レッスン ~甘い恋の手ほどき~
「どうしても、片桐さんが欲しい」
その時、ふと浮かんだあの声。
そんなのきっと、社交辞令に決まってるのに、すがってしまいたくなる。
鞄の小さなポケットにしまっておいたそれ。
それを手にしたとき、涙が一滴零れ落ちて、慌てて手で拭いた。
綺麗な字。
あの時走り書きしていたのにもかかわらず、11桁の整った数字。
震える手で携帯を取り出すと、ピカピカ光って着信を示している。
「佐川修二」で埋め尽くされた着信は、20分前を最後に途絶えていた。