泣かない家族

病院内は全面禁煙だけど、暗黙の了解でタバコが吸える場所がある。

外だけど誰かが気を効かせて空き缶を置いている。


雪が積もる外で「さむっ!」と言いながらタバコを吸った。


入院患者の服を着た何人かもタバコを吸っていた。

点滴を持ったままの人もいる。



タバコを数本吸いながらも腕時計を何度も眺めてしまった。



頭の中はガンが全部取りきれますように、そして温存出来ますように、


そればっかりがグルグルと回っていた。



あんなに苦しんで抗がん剤を打ったんだから小さくなるか消滅してほしかった。

せめてリンパのガンさえ消えてくれれば母の再発の確率がグッと下がる。



肌の色が変わり、髪を失い、爪も黒くなり、口内炎に苦しみ、味覚がずれて、吐き気と微熱に悩まされたんだ。


少しどころか全部いなくなってしまえばいい。




あたしと父は落ち着きなく交互にタバコを吸いに行った。


それを繰り返していると、母の手術は終わった。



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