透明水彩

刹那、背後でカツリ、と響いたヒール音に振り返る。
そこにいたのは芽梨ちゃんで、泣きすぎたのだろうか、真っ赤に充血した目があたしを憎々しげに睨みつけていた。


「……だから、言ったのに。」

「え……?」

「嫌な予感がするって、言ったのに!」


芽梨ちゃんが言っているのは、恐らく出かけ際の莱との会話のことだろう。

何と返せばいいか躊躇い言葉を詰まらせるあたしに、芽梨ちゃんは静かに詰め寄る。


「………ねえ、美凪さん。何で莱を巻き込むの?美凪さんには、理人さんがいるじゃん。」

「芽梨、ちゃん?」

「もう、これ以上莱に関わらないで。莱を傷つけないでよ。あんた1人のわがままで、どれだけの人が傷つくか、わかってんの?」


芽梨ちゃんの言葉は、正論だった。
あたしがいるから莱は傷つき、あたしがいるからみんなを傷つけた。

全て正しくて、余計に返す言葉なんて見つからない。
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