透明水彩

あたし1人が犠牲になれば――…

この世界から消えれば――…

全ては終わる。

もう誰も傷ついたりなんかしないし、人間兵器であるこのリングも、存在しなくなる。

きっとそれが、今のあたしとこの時代のあたしに通じる、共通の思いなのだろう。

そんなことは最初からわかっていたし、あの日、この第二アジトに来て莱と芽梨ちゃんの会話を聞いてから、あたしはある決断を胸の内に秘めていた。

事前の下調べにより、この第二アジトの出入口はカードを翳したりしなくても比較的自由に外に出入りできることがわかった。

第一アジトのように、皆が集まる大広間の前を通らなくても、ゲートへと辿り着けることもわかった。

それらはあたしにとって、全てが好都合。

第二アジトへ身を隠してから4日、あたしは決意を固め、それを実行に移すことに決めた。
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