透明水彩


自分が怖い。
でも、関係ない。


「もういい、やめろ美凪!テメェの身体がもたねぇ!」

「美凪……!」


ケイが言う通り、そろそろきつくなってきた。
思いのほか体力消耗は激しい。

でもダメだよ、まだ。
まだアイツに、炎は届いていない。


「パパ……っ!」

「芹奈、一時撤退だ!あれはもう、手に負えない兵器だ。」


炎を恐れて逃げ出したり、焼かれて倒れ込んでいる武装集団の奥、ようやくはっきりと捉えた2人は、逃げようとしているようだった。

でも、逃がさない。
燃えて、無くなってしまえばいい。


「おい、ナギ!」


湊の声が響いたのと、春水さんに着火したのはほぼ同時だった。

つんざくような高い悲鳴と低い悲鳴が奏でる、悲愴なるハーモニー。
僅か数秒で、春水さんの姿は塵と化した。

その傍らで泣き崩れるのは芹奈さん。
芹奈さんもあたしと同じ悲しみを、味わえばいい。
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