灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
3. 暗黙のルール



『郷田。』



『え…?』



『あたし、あんたのことそう呼ぶわ。』



助手席で膝を立て、
窓の外を眺めながら言った。



彼が笑ったかどうかは
わからないけど。
『ご自由に』と答えが返ってきた。



ある程度走って、
車は警備員に誘導されながら
車庫入りする。



車から降りる際、
『アキ。ここからはコレかぶってろ』
とつばの広いハット帽をかぶせられる。

 

『は?意味わかんないし!』
 


『目立つんだよ。色々と。そのうち
 わかる。』


 
よく理解出来ないまま
ホテルみたいな建物へと
足を踏み入れた。



艶やかに光る床の上を
コツコツと靴音を鳴らし歩いていく。
振り返って見る人たち。
自然とあたしたちをよけて
道は開かれる。



目立つってこういうこと?
周りが見てるのは間違いなく
容姿端麗な郷田だと思う。
当の本人はグラサンひとつで
後ろに居るあたしを
気にしながら歩いているけど。



あたし…
なんか場違いみたいじゃん。
こんなホテルみたいな場所に、
一体何があるって言うの…?











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