ガリ勉くんに愛の手を
翌日から佐奈は前よりもっとバリバリ働くようになった。

「佐奈、あんまり無理するなよ。」

「大丈夫、東京でボーっとしてたから体がなまってうずうずしてんねん。
やっぱり働くってええな~」

佐奈にやっと本来の笑顔が戻ってきた。

お客も佐奈が帰って来た事を喜んでくれた。

「よぉ~佐奈ちゃん、
出戻りか?!」

常連客の哲夫が佐奈をからかった。

(うぅ、一番言われたくない言葉やな…)

でも佐奈は開き直った様子で、

「そうや!悪い?!
なんかあったら哲ちゃんが責任取ってや。」

「なんで俺が~?怖いな。」

店中、笑いの渦が巻き起こった。

そんな冗談も言えるようになった。


でも…

ガッチャーンッ!

(ハッ、ベン?)

とっさに振り向いた。

ガラスが割れる音を聞くと思い出す。

「ごめん、コップ割ってしまった。」

それはお客だった。

(いつもコップや皿を割るのはベンやった。

そしてそれを見て注意するのはうち…)

もうそんな光景は二度と見られないのかも知れない。

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