ガリ勉くんに愛の手を
あゆ美に申し訳なくて、それでも何も言えず逃げている自分が情けなくて彼女の前で初めて涙を見せた。

(うぅっ…うぅっ…)

「勉君、泣いているの?」

「あゆ美 さん…本当に、ごめんなさい。
僕の…せいで…」

(勉君。)

「とりあえず、こんな所にいたら目立ってしまうわ。
ここから離れましょう。」

さっき病院で泣き崩れていたあゆ美とは別人のように落ち着きを取り戻していた。

お前なんか勝手にどこへでも行ってしまえと罵ってくれればいいのに。

タクシーの中ではお互い何も話さず無言でいた。

5分ほどでついた場所はあゆ美がよく通っていた小さな喫茶店だった。

♪カランカラン♪
「いらっしゃい。」

喫茶店と言うより古びた宿のようにとても静かな場所。

奥からおばさんが出てきてあゆ美を出迎えてくれた。

「あら、あゆちゃん久しぶりやな。東京に行ったって聞いてたんやけど帰って来たんか?」

「う、うん。おばちゃんの顔が見たくなって。」

「まぁ、嬉しい事言うてくれて!さぁ、いつもの特等席座って。」

あゆ美は一番奥の席に座るとコーヒーを二つ頼んだ。

(あゆ美さんにちゃんと謝らなくちゃ。)

僕は痛みをこらえながらテーブルの横に土下座して頭を下げた。

「あゆ美さん、約束をやぶって本当にごめんなさい!」

「ちょっと、こんな所で何をするの?!」

「謝って許してもらえるとは思っていません。でもあゆ美さんには本当に迷惑をかけた上に辛い思いをさせてしまって、僕は、僕は…」

あゆ美は慌てて僕の体を支えて起こしてくれた。

「とりあえず椅子に座りなさい。無理をしちゃだめよ。」

あゆ美はこんな僕でもいつもと変わらない優しさで包んでくれた。
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