ガリ勉くんに愛の手を
―おっちゃんは?―

ザワザワッ、ザワザワッ

公園の草村から怪しく揺れ動く影。

誰かがそこから二人の様子をじっとのぞいている。

(何もたもたしてんねん。早く佐奈を引っ張ってアパートに行け!)

そこに隠れているのは?

(ええの~、俺はマリリンちゃんに振られて一人寂しいイヴを過ごさなかんって言うのに。
ベンのヤツ、俺より先に何を何する気やな。
うらやましい~!)

ブツブツとつぶやいているおじさんの肩を誰かがトントンと叩いてきた。

ところが、おじさんはこっちに集中して全く気付いていない。

トントン、トントン

「ちょっと待てや、今ええとこやねんから。」

それでもおじさんの肩を叩き続けている。

「誰やねん。俺の邪魔をするヤツは?!」

振り向いたおじさんの顔に懐中電灯の光が照らされた。

「こんな夜中に覗きとは、趣味悪いなぁ。」

(お、おまわりさん?)

慌てたおじさんが、
「い、いや。違いまんねん。そりゃ誤解や。俺は別に覗きとか、そんな趣味ないし。」

「言い訳は署で聞こか?さぁ、一緒に行こう。」

腕をつかまれ、またもや連行されそうになっている。

「お、おまわりさん。俺、ホンマに[変なおじさん]違うで。」

「誰も[変なおじさん]とは言うてないやろ?」

「ホンマに違うねん。あれは俺の娘やから。」

「ほぉ、娘のラブシーンを覗くとはもっとたち悪いなぁ。」

「そ、それは……」

「とりあえず行こうか。」

「ヒ、ヒェ~!
助けて、佐奈っ!ベーンッ!」


寄り添って公園の外に歩きだしていた僕はその声に一瞬立ち止まった。

(ん?!)

「ベン、どうしたん?」

「いや、今誰かが呼んだような気がして…」

「うちには何も聞こえへんかったけど?」

(空耳?)

「なぁ、早く行こう。」

僕の腕にしっかりとしがみつく佐奈を見たらこれからの事で頭がいっぱいになってきた。

(が、がんばろう!)

その後、おじさんがどうなったのかは…?

今の僕たちには関係のない事だ。

  …End…
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