ガリ勉くんに愛の手を
「こんばんは。」

ここへ来ると僕は元気になる。

「おお、ベン来たか。」

おじさんはいつの間にか僕の事を[ベン]と呼ぶようになった。

長ったらしい名前がうっとおしいのだろう。

「佐奈さん、忙しいそうですね。」

ようやく自分から声をかけられるようになった。

「見たらわかるやろ?
そう思うんやったら手伝ってや。」

佐奈は相変わらずの佐奈だ。

「は、はい。」

僕は佐奈に言われた通り手伝いを始めた。

しかし運んで来たお皿やコップを洗い出した途端、一枚目…

ガッチャーン!

「うゎーっ!」

悲鳴のようなの声。

「どないしたん?!」

佐奈が駆けつけた。

「血、血が…!」

指から流れる血を見て今にも倒れそうになった。

「見せてみ!」

佐奈はすばやくハンカチを取り出し傷口をふさいだ。

「おっちゃん、バンドエイドちょうだい。」

「あいよ。」

「はい、もう大丈夫やで。
水にぬれて血がおおげさに出ただけや。
大した事ないわ。」

佐奈のテキパキとした応急処置にただただ感動するばかり。

「あ、ありがとうございます。」

「やっぱり、おぼっちゃんやな。
洗い物はやめておき。」

頼もしい佐奈の姿を見て、

「佐奈さんって看護婦さんになれますよ。」

ちょっと、冷たい目線で、

「君は、医者にはなれんな。」

きっぱりと…

言われてしまった。

(は、は、はぁ…)
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