誓~天才演技者達の恋~


「菊花も仕事、調整したんだな。」

「えぇ」


ユリアの担任は笑いながらそう言うと、許可書をユリアに手渡した。

そしてもう一つ。


「台湾、ロンドン、ニューヨーク...ですか?」

「芸能科は記者がいると面倒だからな、国外になるんだよ。どこがいい?」


ユリアはアンケート用紙を見ながら、担任と話を進める。

多くの人はもう決まっているらしく、ユリアが最後だった。


「みなさん...どこへ?」

「あぁ...結構いい感じでみんな分かれてるぞ。菊花と同じ事務所の城崎は、ロンドンを選んでるな」


「ロンドン...」とユリアは呟くと、担任の机の上から赤ペンを取る。

そして大きく、ロンドンに丸をした。

担任に手渡すと、担任は机の引き出しから飛行機のチケットを出す。


「もう渡されるんですね」

「明華はなんやかんやで金持ちだからな」


ユリアは担任の言葉に笑うと、職員室を後にする。

その時ちょうど、隣の教材室から由梨が出てきた。


「あっ...」

「あら、Yuriaさんじゃない。美星堂のCMでは、卓也がお世話になってます」


ユリアは由梨にお辞儀をすると、傍を通り過ぎた。

由梨の視線を背中でも感じる。

由梨はいろいろな教材を抱えながら、ユリアとは反対方向に進んだ。


「あぁー怖かった」


角に曲がって、由梨の視線を感じなくなったユリアはしゃがみ込んで、ボソリと呟く。

するとちょうど卓也も曲がってきた。


「あっ!」

「Yuriaか...また具合悪いのか?」

「ち、違うわよ。怖くて...」

「はぁ!?」


ユリアは首を振って、卓也から離れようとした。

すると、卓也はユリアの腕を掴んできた。
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