誓~天才演技者達の恋~

結婚式はロンドンで?


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ユリアは目を開いて、その建物を見る。

それは女の子なら誰もが憧れる場所。


「セントブライド教会...」

「そう。俺の好きなマンガによると、ウエディングケーキのデザインは、ここから来たらしい」

「へぇ...男の人に連れてこられるなんて...これが彼氏だったら期待する状況ね」

「プロポーズを?」


ユリアは頷きながら、輝く目でセントブライド教会を見ている。

卓也はそんな姿を見て、鼻で笑いながら、何処かで幸せを感じていた。


「死んだって言っただろう?」

「えっ...えぇ、あなたの好きな子?」

「そう。同じ“ゆりあ”って名前だったんだ」

「重ねてた...ってこと?じゃあ私を助けたのも“ゆりあ”さんと名前が一緒だから?」


卓也は首を振って、教会の天辺を見る。

ユリアは不安な表情で、卓也を見ていた。


「最初見たときは“ゆりあ”に似てて、ビックリした。面影があったんだ。でもオマエを見ているうちに違うと思ったんだ。」

「どこが?」

「分からない。だけど俺はちゃんと菊花ユリアを見てる。だから...そんな顔するなよ。

俺のこと...好きなの?」

「馬鹿ッ!違うわよ!自惚れないで」


ユリアはそう言いながら、顔を真っ赤にする。

いきなりの『好きなの?』に焦ってしまった。


「もう忘れなきゃいけないんだと思う。
白野百合亜のことは...さ」

「しろの..ゆりあ?」


また記憶の一部が、脳内に流れる。

そして支配されるのだ。

身体がいう事を聞かなくなる。


言うなれば、前の自分に支配される感じ。


ユリアは卓也の腕を力強く握る。

そして、前の自分に支配されたまま、口を開ける。
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