誓~天才演技者達の恋~


ビッグベンに何とか着いた卓也は、傍にあるベンチにそっとユリアを置く。

そしてポケットから携帯を取り出して、電源を入れた。


「嘘ついてゴメンな」

「.......」

「本当は重ねてた、オマエと百合亜。」

「.......」

「でも今日で最後にするわ。
百合亜を忘れるためにさ....」


卓也は、由梨に電話をかける。

由梨はワンコールで電話に出た。


「由梨か?今ビックベンの前にいる。教師と一緒に来てくれないか?」

「ユリアと一緒なの?」

「そうだよ。でも心配するな。今日で最後。
これからは、ずっとオマエといてやるよ。」


卓也は携帯を切ると、電源を落とした。

そしてユリアのポケットから、携帯を取り出した。


「....ゴメン」


卓也はそう言うと、携帯を粉々にした。

周りの観光客は、目を見開いて卓也を見る。


「何がしたいんだろうな...俺は」


卓也はそう言ったきり、何も言わずに由梨と教師を待つ。

時々苦しそうにするユリア。

卓也は心を痛めながらも、無視をした。


「卓也ぁ...私はここ...」


ユリアの寝言に卓也は口をあける。


「卓也...私は...白野百合亜だよ?」


卓也はユリアの手を握り締めた。

もう再開しているのに、お互いに気づかない。


白野百合亜と日比野卓也は、この日。

最初で最後のデートを終えた。


もうすぐ、天使が迎えんに来る。

その日は刻々と近づいていた...。
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