誓~天才演技者達の恋~

ひとりの人生

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鎌足は、フッと笑うとカップを置いた。


「次の日、彼女は別人だった」

「.......」


朱美は首を傾げる。


「別人?当たり前じゃないですか!!髪に服装に笑顔に...そんなに変わったら別人って言ってもいいんじゃ...」


朱美の言葉に反応したのは、雪奈だった。

オーブンからクッキーを出すと、朱美たちのテーブルに置く。


「可愛くなったし、昨日までの香織とは違かった。だからこそ、母親は香織を非難した」

「えっ?」

「自分達で作り上げた子供...その香織が完璧だと思ってたのよ。」


鎌足は遠くを見ると、雪奈に珈琲を頼む。


「泣いてすがって来たんだ。今の私は間違っているのかと」

「間違ってる?」

「可愛くなり、綺麗になった香織。芸能界デビューはすぐだったに違いない」

「.........」

「でもすべて、そのチャンスを...香織の母親が潰したんだ」


朱美は、珈琲カップを落としそうになった。


「どうして?だって、香織の親や、その前の親はプロダクションを経営していたんですよね?」

「.......」

「そんなに変わったなら、芸能界デビューさせて、稼いだほうが良かったんじゃ...」


雪奈は鎌足におかわりを渡す。


「そうだよ。そのほうが香織にとっても、家にとっても良かったの」

「....?」

「でもね。その芸能界にいく事を勧めたのが、香織の父親だったの」


香織の母親と父親は、とにかく不仲。

香織のお婆ちゃんも、その父親が嫌いだった。

彼の進めだったから、香織は芸能界への夢を閉ざされた。


「香織が本当に好きだった人は、お父さんで。剛史はそのお父さんになんとなく似ていたの」

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