誓~天才演技者達の恋~

最初と最後を


部屋に入ると、ドアに百合亜を叩きつけるように抑える。


「ンッ...ッ...」


百合亜は、目を閉じながら卓也のキスを感じる。

もうどうにもならない、もどかしさ。

それが百合亜にも伝わってくる。


「卓...也ァ...」

「ごめん」


卓也は百合亜から離れると、その場にしゃがみ込む。

百合亜は唇に手を当てながら、しゃがみ込んだ卓也を見つめた。


「何で俺、由梨と付き合っちゃったんだろうな」

「....」

「何で俺、素直にオマエを思い続けること、出来なかったんだろうな」


卓也は悔しそうに唇を噛む。


「今でも、百合亜が大好きなんだ」

「.....」

「菊花ユリアの時に、意地でも自分のにしちゃえばよかった」


死んだと騒がれた天才は、今目の前にいる。

ずっと追い続けて、いきなり消えた女の子。


「オマエは、どっちでいたい?」


菊花ユリアの時には感じなかった感情が、卓也の中に沸々と。

数年ぶりの百合亜は、オトナっぽくなっていた。

小六のまま、止まってしまっている卓也の中の百合亜。


「オマエが白野百合亜でいたい。と言うなら...」


百合亜は卓也に抱きついた。


「百合亜?」

「私、卓也の前では、白野百合亜でいたい」


その瞬間、卓也の理性は無くなる。

百合亜の唇を捕らえると、噛みつくようにキスをする。


「んッ...ハァ...」


百合亜は初めての痺れる感覚に酔いそうになる。

ギュと卓也の背中にしがみついた。
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