誓~天才演技者達の恋~

生まれ変わること

___________
_______________


「果歩さん、待ってくださいッ!!」


百合亜は駆け足で果歩について行く。

杏莉はデカイブランド物のサングラスをして、笑う。

茉莉はその後ろに、影薄くいた。


「果歩さん!!」

「百合亜、悩んでいてもしょうがないの」


急に立ち止まった果歩は、後ろを振り返って百合亜を見る。

小六から百合亜としての記憶が止まっている百合亜にとって、果歩はすごく老けたように見える。


「でも私、ちゃんとセットしてない..」

「そのボロい服じゃ、何したって同じよ」


果歩は相変わらずのマイペースで、百合亜にとって、それが何よりも心の支えだった。

目を覚ました時、果歩は百合亜の傍で眠っていた。

百合亜は急な花坂果歩をいう人物に驚いたが、もう心(記憶)は白野百合亜。

菊花ユリアだったら、多少心が乱れたかも知れないが、百合亜だから大丈夫だった。

なんせ、そろそろ会わなきゃと思っていたから。


「最近、この駅の地下にデパ地下が出来たのよ。国内最大級の」

「は、はぁ...」


曖昧な返事をする百合亜に対し、杏莉と茉莉は感激の声を上げていた。


「来たかったのよぉ~、ここ。向こうで聞いてて」

「私も!最近仕事ばっかで、来てなくて」


たくさんのサラリーマンやOL達の横を通り過ぎ、百合亜は帽子を深くかぶる。


「百合亜!!」


百合亜は足を止めて、辺りを見回す。

果歩や杏莉、茉莉はそれに気づかず足を進める。


「誰?」


帽子は被っているし、化粧も何もしていない。

バレるハズがナイ...。


「百合亜、百合亜!!」
< 243 / 252 >

この作品をシェア

pagetop