誓~天才演技者達の恋~

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ユリアは、明華学園の前まで車で来ていた。


「どうしますか?ユリアさん」


菊花プロダクションに入社した、香織とは遠い親戚の室井(ムロイ)和人(カズト)。

和人はユリアの直属な運転手を任されていた。


「でも香織さんにバレたらマズイですよ...病院抜け出すなんて」


ユリアは窓を開けると、明華の門をただ見つめていた。

和人はユリアの姿にため息をつき、ユリアの返事を待っていた。

ユリアは頭を抱えると窓を閉める。


「今日は調子が悪いみたい...。賢斗の演技見たかったけど...しょうがない」

「分かりました。」


和人はアクセルを踏むと、ユリアは広い車内に寝そべった。

頭がズキズキズキズキする。

言葉に言い表せないほどの頭痛。


「室井和人さん...。香織さんに怒られたら、ごめんなさい」


和人は頷くと大通りに入っていった。

その時、リムジンの横を赤のバイクが通り過ぎる...。

ユリアはバイクを目で追うと、顔を歪ませた。


「赤のバイク...味方な気がしないわ」

「記者ですよ。なんとかフラッシュの...ユリアさんも芸能界に入りたいのなら覚えておくといいですよ。
そこの編集長、なかなか頭がきれるって言う噂ですから」


ユリアは香織から貰った、昔のドラマの台本を握り締めた。

そして台本をパラパラと捲ったかと思うと閉じた。

和人が不思議そうにしながら運転していると、ユリアは小さく口を開けた。


「ねぇ、私が有名になって...賢斗も有名になったら...私たちは、引き離されてしまうの??」


“すべてを知っている”和人は何も言えず、言葉が詰まる。

ユリアは何かを察して、台本を読み始めた。


「私たちに熱い愛がある以上...誰にも邪魔なんてさせない。誰にも文句なんて言わせないんだから....」


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