誓~天才演技者達の恋~
朱美はすぐに気がついた。
彼女は“確信犯”だと....。
朱美はカメラのデータが消えている事を確認すると、明日香に笑みを送った。
「大丈夫ですよ。たいしたのは入っていなかったので」
「そうですか。良かった。高速に入る前のポカーンとした顔撮られてたらどうしようかと思ってたんです...アッ、これじゃ確信犯みたい」
明日香はそう言うと、鞄の中から小切手を出し朱美に手渡した。
そして耳元で呟く。
「これで音声もよく拾えるカメラやビデオを買ったらどうですか?私たちを馬鹿にするために、プライベートをめちゃくちゃにするために」
「ッ!!!」
明日香は朱美の怒る顔を見ると、不思議そうに首を傾げる。
そしてひらめいた!というポーズをすると、口角を上げた。
「せっかく小切手をあげてやったんだから、いい写真...撮ってくださいね。誰も不幸にさせない良い写真を」
明日香は妖しく笑うと、校舎に入って行く。
朱美は悔しそうに明日香の背中を見つめていた。
「菊花ユリアについては、私が掴む!!城崎賢斗...今に見ていなさい」
明日香はそう呟いた。
影から出てきた賢斗は明日香の背中を見つめる。
「宣戦布告か...」
明日香は賢斗の視線を感じると、また口角をあげる。
「宣戦布告よ城崎賢斗。白野百合亜を超える天才..見せてもらおうじゃない」
賢斗は風に乗ってきた明日香の言葉に、苦笑い。
明日香の本性は全然お嬢様ではない事を、再確認した。
「賢斗ッ!早くしなさい!!」
校舎から出てきたのは、衣装のドレスを纏い化粧をした由梨。
姫様の格好をしていても、中身は歌原由梨。
「もう開演するのよッ!!早くッ!!」
「由梨...」
由梨は振り返って、賢斗の言葉に耳を傾けた。