oneself 後編
「お疲れ様」


この前と同じように、店長から茶封筒を手渡される。


明日も朝から学校があり、今日は家に帰る予定のあたしは、早めに上がらせてもらう事になっていた。


時刻は11時半前。


今から駅に走れば、ギリギリ終電に間に合うだろう。


13500円。


そう記されたノートに、サインをする。


これで支払いに必要な金額は稼ぐ事が出来た。


「次の出勤どうする?」


サインを確認した店長が、座っていた椅子ごとクルリとこちらを向いた。


「金曜日でお願いします」


頭の中で、財布の中身と貯金、支払いや欲しい物を思い描いた。


もう少し余裕が出来るまで、ここで働こう。


哲平も許してくれた事だし。


店長は「了解」と微笑み、あたしは茶封筒を鞄に直すと、一礼してその場を去ろうとした。


「あ、望月さんが誉めてたで」


望月さん?


あたしはもう一度店長の方を向き直し、首をかしげた。


「いい子が入ったって」


そう言って店長は、ニコリと笑った。


初めて出勤した日、ヒナタさんのヘルプとして、席に着いた。


話上手で、すごく素敵な人だった。


その望月さんが?


< 105 / 244 >

この作品をシェア

pagetop