oneself 後編
part8

疑惑1

あれから、3カ月の月日が流れた。


あたしの胸元には、あの日哲平から貰った、シルバーのネックレスが光っている。


大丈夫、信じてる。


そう思えたのは、ほんの一瞬。


やっぱり不安は、消えてはくれなくて。


それでも苦しい時や辛い時には、ネックレスをギュッと握って、願いを込めた。


10月の売上で、哲平は聖夜さんに続く、ナンバー2の位置まで上り詰めた。


そしてそれは今も抜かれる事なく、哲平は確実に聖夜さんに近づこうとしていた。


あたしはいつだったか、哲平に尋ねた。


「いつまで続けるつもり?」、と。


「聖夜さんを超えたい」


答えにはなっていない、そんな言葉が哲平からは返ってきた。


聖夜さんはここ2年ほど、その座を譲る事なくやってきた人。


お店の中だけでなく、ホスト業界でも名の知れた人。


ナンバー1なる事は、いくら哲平でも、簡単ではない事をあたしは分かっていた。


12月は最も売上が期待できる月で。


哲平は日曜も休みを返上し、客との営業を率先して行っていた。


一日に数人の客と、時間をずらして、ご飯を食べに行ったり、カラオケやボーリングに行ったり。


それは、あたしとの時間が減っていく事で、賄われていた。


それでも結局、哲平は聖夜さんを抜く事は出来なかった。


「今月こそは…」


哲平はそう言った。


不安にならない訳もなく。


不満がない訳でもない。


でもナンバー1になれたら…


哲平はホストを辞めてくれるはずだから。


そんな期待を胸に、あたしもそんな生活に少しずつ慣れてきた頃だった。


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