最後の恋


そして、K駅の改札を出てしばらくすると、椎名からまた電話が鳴って。



「どこにいてるんすか?今駅前着きました!」


その言葉を聞いた私は、物陰からひょこっと飛び出すと、キョロキョロと周りを警戒しながら見つけた椎名に近付いていった。


「ごめんね、行こうか」

「はいっ!」


会った瞬間に、満面の笑みになった椎名
は、隣を歩く歩幅も、急ぎ足の私に合わせるように歩いてくれた。



「ここだと個室だからさ」


そして、私がチョイスした全室個室の和食系の居酒屋に着くと、小さな個室に案内された途端ホッとしたようにまた笑顔になった。


少しだけ、申し訳なく感じる。

コソコソさせて、申し訳ないって。


だけど、誰かに見つかって困るよりも、安心していられる方がずっといい。


運ばれてきたビール片手に初めて二人で乾杯すると、張り詰めていた緊張がとけるようにやっと落ち着けたような気がした。


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