最後の恋


「それ、いる情報っすか?」

「えっ?」


歩いていた椎名の足が止まり、私の足も自然と止まる。


「昔のことなんかどうでもいいやん」

「…そうだけど」

「過去は過去、今は今。そうでしょ?」

「…うん」


そう言われ、渋々頷いたけど。

椎名が今までどんな恋愛をしてきたのかはやっぱり気になった。


元から年上が好きなのかとか、そうではなく元カノは年下だったのかとか。どれくらい付き合っていたのか、いつ別れたのかとか。


気になるから…


「でもさ、やっぱり気にな」

「莉奈さんは気になるん?元カレのこと。俺は元カノのことなんて気にもならんで?思い出すこともない」

「……そうだよね」

「でも俺だって莉奈さんの元カレのことは気にはなる。バッティングセンター行く時電話かかってきてたし…また連絡取り合ってんのかなとか。気になってたけど…でも俺は今莉奈さんと付き合ってるし、気にせんようにしようって思ってた」


いつも笑っている椎名のやけに真面目な顔に、何だか罪悪感が生まれていく。



「…ごめん」

「なんちゃって。ウソウソ、気にしてないから。ほら、行こ!」


謝る私の手を優しく引っ張り、椎名はまた歩き出した。

過去は過去。今は今。

そうだよね。

過去なんて…関係ないよね。


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