最後の恋


「おはようございます…」

「おはよう」


翌日。勤務時間ギリギリに出勤してきた早川さんは明らかに低いテンションだった。

もしかして椎名のこと?
それともゲームの一気で二日酔い?

頭の中で想像しながら淡々と仕事をしていると、背後に視線を感じて思わず振り返った。


「どっ、どしたの?」

「昨日せっかく椎名君とご飯行けたんですけど…ショックすぎることがあって」


落ち込んだ様子で私を見る早川さんにドキっとする。


「椎名くん、彼女出来たらしいんです」


聞きながら、迷う。

一ヶ月経ったら話そうなんて考えていたけど…このまま一ヶ月黙っているのはいけないと思った。

話さなきゃ。

ちゃんと言わなきゃ…


「しかも年上らしいんですよね」


えっ?


「っていうか男は一度は憧れるんですよね?年上の女に」


まぁ…そうなのかな。


「でも年上がいいとか思うの今だけじゃないですか?結局同じように歳をとるわけだし。ほら、年の差婚したあの芸能人夫婦も結局若い女の子と不倫して別れたじゃないですか」


あぁ、あったね、つい最近週刊誌で見た。


「若いうちは年上に憧れるんでしょうけど、結局は目が冷めちゃうんですよ」

「そうなのかな…」


そう返すだけで精一杯だった。

ちゃんと話さなきゃとは思っているのに…言葉が出て来なかった。


今だけ?

いつかは目が冷める?


椎名も…年上に憧れてるだけなのかな。


早川さんの言葉が私の心に重くのしかかっていった。


そして結局話せないまま一日が終わって。

モヤモヤした気持ちのまま時間だけが過ぎていった。

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