最後の恋



「でも…信じてもらえなきゃ疲れますよね。いつになったらこれが終わるんだろうって」

「まぁね…」


良い答えが見つからなかった。

二人の問題なのだから、そもそも私が首を突っ込むことでもないし。

これからどうなるにしても、佐倉さんと桐谷君ふたりの付き合いなのだから。



「ひとつ聞いてもいいですか?」

「ん?」

「松永さんは、どうして椎名じゃダメだったんですか?」

「えっ?」


どうして?



「どうしてって聞かれても…」


桐谷君だって知ってるんでしょ?

営業部のみんなで賭けゲームしてたんだよね?



「あいつ、松永さんとのこと、俺だけには付き合い始めた時から話してくれてたんです」

「えっ?」

「まぁ、そもそもずっと、入社した頃から俺は相談とか聞かされてたんすけどね」


桐谷君の言葉に、何だか訳がわからなくなっていく。


「だから12月に六人で食事行った時も、すっげー緊張して一人でから回ってて。大丈夫か?こいつって心配だったんですけど。でも、椎名から誰にも言わないでくれって言われて、松永さんと付き合えた話を聞いた時は本当にびっくりしたけど…マジで嬉しかったんです」


何?どういうこと?


「まさか付き合えるなんてあいつも俺も思ってなかったから…デートする時もどこ行けばいい?とか、どういう服着てけばいいとか。いちいち何かあるたびに俺に電話してきたりして」


桐谷君はそう言いながら何かを思い出すようにクスッと笑った。


「初デートの遊園地も、冬のデート特集ってのが載ってた雑誌で俺と一緒に調べたんです。コートとか服もデート用に買ったんすよ」


頭の中がいっぱいになっていく。


「ちょっと待って」

「へっ?」

「あのっ…賭け…一緒にしてたんじゃないの?」

「賭け?あっ……」


桐谷くんはそう言うと、気まずそうに苦笑いを浮かべる。



「…営業部のみんなでお金賭けてゲームしてたんだよね?五万円……」


「いや、それは…」


「いや、それはって何?……あいつが私に近付いたのは…別に本気じゃなくて…私を落とせるかのゲームだったんでしょう⁉︎」


思わず声が荒ぶってしまう。

思い出しただけで腹が立ってきたからだ。


だけど…



「それは……勝手に先輩たちが言い出した話で」


桐谷くんはそう言いながらため息をつくと、真っ直ぐに私を見つめた。


「あいつはマジで研修会の時から松永さんに一目惚れしてたんです。でもあの、大原さんに食事に誘われた時に…先輩たちにどうしたら松永さんと距離を縮められますかってあいつが相談してて…」

「えっ…」

「それで、おもしろがった先輩たちが、椎名が落とせるか落とせないかの賭けを勝手に始めたんです」



な……何それ。

じゃあ、椎名は…勝手にその賭けに、巻き込まれてたってこと?



「でっ、でも椎名は……ゲームだって。全部ウソだったって、私に言ったんだよ?」


「あいつ……そんなこと言ってたんですか」


桐谷君はそう言うと、呆れたように深く息を吐いた。


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