ハニートースト ~カフェで恋したあなた~






「ごめんね。私、こんなんで」




「何言ってるんだ?世界で一番の自慢の娘なのに」





優しすぎて・・・・・・



温かすぎて、涙が出る。




お父さん、ごめんね。





彼氏もいなくて、結婚だってできるかどうかわからないけど、人を好きになるってことだけはちゃんとわかったよ。






「この店、私が守るから安心してね」




ちゃんと話したのは初めてだった。




何となくそうなるのかなって雰囲気はあったけど、正式にお願いされたこともないし、自分から言ったこともなかった。







「泣けること言うなよ。今日は、お母さんと俺の出会い記念日なんだよ」






何年も昔の、出会いを“記念日”として覚えているお父さんをとても誇りに思う。





「お父さんこそ、自慢のお父さんだよ」




こんなことを言ったのも初めてだった。




恥ずかしくてすぐに店の奥へと入り、残ったコーヒーを飲んだ。






それからも、片桐さんが店に来ることはなかった。




何かに打ち込むことで寂しさが少しだけ紛れた。







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