ハニートースト ~カフェで恋したあなた~





私が知っている片桐さんはほんの一部なのかもしれない。




付き合いが長いだけで、本当の片桐さんのことは知らない。





どんな恋愛をしてきたのか。



夢をあきらめた後、どんな気持ちだったのか。






恋愛対象に見てもらえるわけなんかない。



私は何も知らないし、片桐さんも私を知らない。




何年も仲良くしているから、知っているつもりになっていた。





よく話すけど、大事な話なんてしてくれたことはない。





私は涙が溢れそうになりながら、片桐さんとあきら君の話を聞いていた。





口数が少ない私を気にして、時々話しかけてくれる片桐さん。




笑顔を作ってもすぐに真顔になってしまった。








「じゃ~な!また来いよ。また店に顔出すから」




3時間くらいお邪魔して、私とあきら君は片桐さんの家を出た。






「な~に、落ち込んでんの?お前、わかりやっす~」




角を曲がると、あきら君が私の背中を押した。




「だって・・・・・・」




「俺が写真見つけたからか?」




「別にそうじゃないけど・・・・・・」




「俺は、見て見ぬふりもできた。でも、それじゃ・・・・・・だめじゃねぇ?ちゃんと片桐さんのこと知らなきゃ。憧れの片桐さんってだけじゃ、いつまでたっても彼女にはなれないんだよ」





あきら君、私よりもずっと大人だ。



恋をたくさんしているだけある。





「さすがだね。あきら君」




「何言ってんだよ。お前、本気で好きなんだろ?」




「・・・・・・」





私は静かに頷いた。







< 24 / 300 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop