トリプルトラブル【完】
トリプルトラブルラブバトル
 直樹は風呂に浸かっていた。
脳裏に浮かぶのは、何故か美紀のことばかりだった。

実は今日、帰り道で直樹は大に告られていたのだ。

美紀に玉拾いを冷やかされた時、急に恋心が目覚めたと大は言っていた。

そんなことがあったからこそ、直樹は自分を見失ってしまったのだ。


「ふうー」
溜め息を吐きながら、湯船に体を沈める。


(――何だろうこの気持ち?

――こんなモヤモヤしたの初めてだ。

――まさか!?

――まさか恋かー!?)

直樹はその時初めて、美紀が少女ではないことに気付いたのだった。


そして、本当の兄弟ではないから恋をしても許されることにも……。


(――ああだからこんなにも……、美紀が愛おしく感じたのか。

――でもまさか……)




「兄貴、ちょっといい? 大のことなんだけれど」
自分の恋心は伏せて、脱衣場に来た秀樹に直樹が声を掛けた。


「大の奴、美紀に恋したんだって」
直樹はストレートに秀樹にぶつけた。


「大が?」
秀樹は思わず吹き出した。


「そんな柄じゃねえだろアイツ」
秀樹は肩を震わせ笑っていた。


「そんなに笑っちゃ可哀相だよ。アイツは本気なんだから」
そう言いながら自分も笑っていた直樹。
目前に恋のバトルが迫っているとも知らずに。

そう……
直樹はそれほどまでに美紀との恋に溺れてしまうのだ。

あの感情はその前兆だったのだ。
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