恋した鬼姫
せらは、何が起きているのか頭の中がパニックになっていた。
ただ、触れられている頬がとても暑く燃えるようだった。

「なんか懐かしい感じがするな。」
金髪の先輩は、せらの顔を見るなり、触れている手でせらの頬を撫でた。
せらは、余計に顔が真っ赤になった。

「あの、…何が懐かしいんですか?」
せらは、取り合えず何か言わなくてはと思い金髪の先輩に質問をした。

「そうだな。初めて会ったはずなのに、前から知っていた気がした。」
金髪の先輩は、優しい顔でせらに言った。

せらも金髪の先輩が言っていることの意味がなぜかわかった。なぜなら、せらも同じ気持ちを感じていたからだ。

「私もです。懐かしい気持ちです。」
せらは、照れくさそうに言った。

金髪の先輩は、それを聞くとまた優しく笑った。
せらは、その笑顔に胸が締め付けられた。

それから二人は、三本橋に着くまでに色々と話をした。ほとんどが金髪の先輩が質問したことにせらが答えると言う感じだった。

せらは、金髪の先輩と話をしているうちにわかったことがある。
金髪の先輩の名前は、「古谷 虎太郎(ふるや こたろう)、高3の先輩だ。

「古谷先輩は、図書室によく行くんですか?」
せらは、短時間に一生懸命考えた質問をした。

「トラでいいよ。皆からは、トラって呼ばれてるから。ん?なんで俺が図書室行くの知ってるんだ?」
「私も本が好きで…この前トラ先輩を図書室で見かけて…。」
せらは、少し言いにくそうにしていた。

「あぁ!俺、金髪だから。そんな奴が図書室にいたら、違和感丸出しだな。」トラは、笑いながら言った。

「トラ先輩は、[恋した鬼姫]って知っていますか?」

「あぁ、図書室に置いてある本だろ?大分古くさい本だけど、いつも気になって何回も読み直してしまうんだよな。」

せらは、それを聞くなりパァっと顔が明るくなり笑顔になった。

トラは、突然せらが笑顔になるので、その笑顔にドキドキしていた。

「そう言えば、最近一年の女子でその子も本が好きだからってよく図書室で会うな。」
トラは、話を反らすように言った。

せらの顔が少し沈んだ。なぜなら、その一年の女子は愛子だとわかっていたからだ。
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