問題山積み



「トイレで吐いてましたから。吐いて出しちゃえば復活するんですって」

「なんだそりゃ」


深夜で誰もいない歩道を、私達は歩幅を合わせて歩く。
帰り道、有村さんとこうしてのんびり歩いて帰るのが好き。
有村さんみたいな人が彼氏だったらいいのにな。
有村さんは人のものだから、有村さんじゃなくて、有村さんみたいな人。
有村さんみたいに背が高くなくてもいい。
有村さんみたいに古着が似合う人じゃなくていい。
一緒に居て、疲れない人。
できれば、有村さんみたいに「か細い女の子が好き」なんて言わないとベター。


「亜樹ちゃん、うち寄ってく?」


私の家と有村さんの家の分岐点、帰りが一緒だと有村さんは決まって私にそう聞いてくる。
圭君のように上手い誘導、回りくどい誘い方はしない。
きっと圭君なら、「テレビ一緒に観ようよ」とか、「ちょっと飲み直そうよ」とか言うんだろう。
今私の隣に居るのは有村さんなのに、ついよその男のことを考えてしまうのは私の悪い癖。


「…ん」


そのストレートなお誘いがいつも気恥ずかしくて、私は小さく返事をする。
そして、有村さんはさりげなく私の手を繋ぐんだ。
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