イケメン大奥

『大奥を一度出て、また入ると寿命が縮むらしいからな』

『健康を害するってホントだったんだな』

『俺らはここを出ないし、出るつもりないもんな、

 関係ねぇよ』

『向こうの世界では俺らみたいなもんは、

 ホストいうて、健康を害するまで酒飲まされるからな』

『ええっ、そうなんですか』

『上様、おいたわしいですな』

『その分な、まぁ、ほら……』



うるさい。ウルサイ、五月蠅い!


「手を動かして」

ようやく皆の口が閉ざされた。

梯子や脚立で棚の上の本から順におろしていき、中に目を通す。


あたしは、

手首を庇いながら、ランやレンに重い本を持ってもらい、

傍で開いてもらう。



ランが水筒を持ってきていて、

林檎の匂いのする茶色い液体をコップに注ぐ。


「上様、どうぞ」

マスクをしていても、甘い果実の香りが鼻の奥に広がっていく。

アップルティー。

口にすると喉に広がる林檎の
爽やかでほんのり甘い、蜜の味。

< 163 / 190 >

この作品をシェア

pagetop