イケメン大奥


ランは見た目は、ボーイッシュな女の子で通りそうだ。あたしより低い背丈に、短めのおかっぱ頭。


「こちらの衝立の裏でお着替えなさってください」


本当は皆に部屋を出て行ってほしい。でも、あたしは「上様」だから、駄目だろうな。大奥に来て上様になって、慣れないのは独りになる時間がないこと。


リアルでは、独りになることなんて、幾らでもあった。


それが淋しかったりしたのに、あたしって勝手だな。



着替えのためのドレスは、ランが用意してくれていた。小さな蝶の刺繍が入ったクリーム色のチャイナドレス。ウエストがきつい、きつ。


食べたすぐの、ぽっこりお腹よ、ひっこめ~。


「もう1サイズ、大きいほうがいいんじゃないか」



気づいたら、衝立の上によじ登って、レンがあたしを眺めている。



「レン! またお行儀が悪いんだから」


まるでそっくり、色違いのチャイナ服のために、何とか見分けがつく2人。あたしが必死でお腹のお肉を押し込んでいる間、衝立の向こうでは、キヨとレイが痴話げんかをしている。




「決闘してほしいなら、すぐに言え」


「……受けて立ちますが、泣きをみるのはキヨ、あなただと思いますよ」


ああ、わがままであろうと、ちょっと独りにして下さい……。


「1サイズ、やっぱり大きいほうがいいですね」


煩い! 睨み付けるとランが怯えたように目を伏せた。


はぁ。



……きついです。




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