天神学園高等部の奇怪な面々Ⅹ
(そんな『白神信者』がぁ、ひた隠しにしている恋人の名を全校生徒の前で自白する生徒会長の姿を見たらぁ…くくくくっ…)

内心笑いを堪えずにはいられない。

だが、ここで気を緩めて正体を悟られるようなヴリトラではない。

生徒会役員らしい毅然とした態度で。

「会長、お仕事中失礼します」

ヴリトラは二歩、三歩と歩み寄る。

月との距離、もう1メートルにも満たない。

ポケットの中の自白剤入りの注射器を取り出せば、すぐにでも突き刺せる距離だ。

あとは実行あるのみ。

ポケットの中に手を突っ込んだヴリトラは。

「駄目ですよ」

とても魅力的なスマイルを湛える月に見据えられた。

「そんな注射器(もの)持ち歩いたら危ないじゃないですか、ヴリトラ君」

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