ハーレム ブラッド
「それより、バイトの話でしょ?」


姫野が言う。


「おっと…そうだった。



それで…だ。


吸血鬼から被害を受けた人間に吸血鬼である私が

『吸血鬼は怖くない』

なんて言っても説得力がないだろう?


逆に、人間に迫害された吸血鬼に


『人間は怖くない』

と言っても説得力もない。



メンタルケアに必要なのは人間に理解された吸血鬼と、吸血鬼を理解した人間が必要なんだよ。」


「ふにゃ〜。

難しいよぉ…」

クーニャが言う。


「クーニャさんは勉強でもしてたらどうですか?」

咲子が言う。


「あんたたちは好きでついてきたんでしょ…」

姫野が言う。



「VAPには人間と共存を図る吸血鬼は多数いるが、


吸血鬼と共存しようと考える人間の職員は僅か…


さらにはVAPは世界中にある組織でね…


人間の職員数よりも支部の数の方が多いんだ。


だから…私の勤める職場には人間がいない。



つまり、君みたいな理解ある人間が必要なんだよ。」


榊パパが言う。


「理解あるかどうかは疑問ですけどね。」


「何を言ってるんだい?


姫野どころか黄昏を手懐け、さらには人間との共存の意思が薄いとされている蒼月をも愛人にして理解がないとは言わないだろう?」
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