ハーレム ブラッド
『余は頼んだ。

私を殺してほしい…と。』

「え?」

『その時には父は死んでいた。


父もこの閉塞された生涯が嫌で血を飲まずに死んだのだ。


苦しみながら…』

「人間も餓死するのはかなり苦しいって聞いたことがあるしな…」


『だから余はこの者ならば私を殺してくれると思った。


男は余の体に自分の血を流した。

そして、余の血液は体外に出て瓶に入った。


だが…余は生きていた。

血液という名の魂だけになって…


余の願いを聞き届けてくれた男は言った。』

「楽に死のうとするな…

楽に生きようとしろ…」


幸大が言う。


『なぜ…それを!?』

「俺ならそう言う。」

『そうか…

まぁ、そして今に至る…』


「そうか…

あんたはまだ死にたいと思ってるのか?」

『ふっ…

閉塞された生涯が嫌で死にたいと思った。


だが…そなたの生き方のどこが閉塞されている?


余はそろそろ…楽に生きたいと思う。

苦しみながら生きるのも…

苦しみながら死ぬのも…

楽に死ぬのも…

しばらくは見送りたい…』


「なら…さ。

俺に力を貸せよ。

生きることの楽しさ…少しはわかる。


が…まずは、大切な、愛する人を救うために…力を貸してほしい。」


『よかろう。

ならば…余に考えがある。』

「わかった。

よろしくな、ヴァン。」

『ヴァン?』

「お前の名前。

無いと困るだろ?

王とは呼ぶ気もない。

だから、ヴァンパイアのヴァンをとった。」

『安直だが…良い名だ。

感謝するぞ…幸大。』
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