『shadow』
第一章

奪われた光



緑豊かなクリシアス王国
春には花を飾り
夏には海を慕い
秋には恵みに感謝し
冬には雪を祭る

そんなただ自然を愛する平和な国に広く深い森の中、
たった一つの家がある。
明るい茶色の煉瓦で作られた小さな家。
煙突からはいつも煙がたっていた。
それが、人が住んでいるという証拠だ。

そんな家のすぐ側にある、小さな子供が丁度よく顔が覗ける低さの噴水に一人の少女がしゃがみ込んでいた。
何やら水面に掌をかざしてブツブツと何か呟いている。
掌によって水面には波が起こり、映っていた少女の顔を歪ませた。


「ドラフィガロ・ア・ジャパーロ…ドラフィガロ・ア・ジャパーロ…」


少女がそう唱える度に、掌と水面の間から水色の光が芽生えた。
が、その光は長くは続かず、呪文の途中にはもうすでに消えてしまっている。
そしてそれを何度も繰り返してばかりなのだ。
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