色をなくした世界
見ればまたも一馬からだった。


(・・・・出る気にならない)


そう思った時。


「シカトかよ・・・・」


後ろから声がした。振り返ればそこには・・・・・。


「一馬・・・・?」


機嫌が悪そうな一馬が、雪乃を睨んで立っていた。


「お前は・・・何泣いてんの?」

自分の着ていたコートを雪乃にかけながら、一馬は雪乃の顔を覗く。


「一馬・・・・雄大君が・・・・・」


それだけで二人の間に何があったのか分かってしまう程・・・・雪乃の様子はおかしかった。


首には雄大がつけたであろう花が咲き乱れている。


「・・・・・・雄大に・・・・・」


やられたのとは流石の一馬も聞けなかった。


一馬の表情からすぐにそれを読み取った雪乃は首を振る。


「雄大君は何もしていないよ・・・・・」


何もしていないはずはない・・・その証拠に雪乃の首には・・・・けれど雪乃は雄大を庇う。


「雄大君熱でうなされて・・・・だから雄大君は悪くないの」


まるで自分に言い聞かせているようにも一馬からは見えた。


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