色をなくした世界
「和哉さんが先ほど亡くなられました」

その後雪乃は山形が言っていた事が一つも頭に入ってこなかった。

(和君が・・・・死んだ?・・・・死んだ?)


夢だと必死に思い込もうとするが・・・目は一向に覚めない。


携帯からは未だに何か話している人の声がする。


しかし雪乃には聞こえていなかった。


今日も・・・いつもと変わらぬ朝だったはずだ。


寝坊な和哉を起こし、朝ご飯は和哉の好きな和食を作った。ネクタイを結ぶのが苦手な和哉に変わり、毎朝ネクタイを結ぶのが雪乃の日課。

そして会社に行く和哉を玄関まで見送り、和哉は行ってくると雪乃の頬にキスをして出かけて行った・・・なんら変わらぬいつもの朝だったのに・・・。


和君が・・・死んだ・・・?


嘘だ・・・嘘だ・・・嘘だ・・・。


何度も口の中で呟くが、現実だった。


それからどうやって病院まで行ったのかは覚えていない。


気付けば和哉の遺体と対面していた。
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