彼は、理想の tall man~first season~
「尚輝に彼女が出来て、美紗が参ってたのを俺は見てたし聞いて知ってたから、逆に尚輝がってのも気になって、聞いたことあったんだよ」
「そう、だったんだ」
一緒にいることに違和感なんて感じない、いることが至極自然だった尚輝。
だけど、特に私に関心があるなんて思うようなことは、当時の尚輝からは感じなくて。
だから、まさかそんな風に晃と話していた過去に驚いた。
でも、なんでその時にそれを私に言ってくれなかったのか、疑問だった。
だから、その理由を晃に聞いてみたけれど――。
昔から約束を破ったことのなかった晃の、当時の尚輝への忠誠心というのは、私が思っていた以上で。
「尚輝にお前には言うなよって釘さされたら、頷いた以上言えねぇだろ」
そんな答えだったから、やっぱり晃はいい奴だと思った。
「今、私に言っちゃったね」
「アハハッ、確かにな」
でも、まあ、もう時効ってことでいいだろ――と。
そう言った晃は、調理場で忙しなく動いているオヤジに声を掛けた。
そして、ウィスキーのロックを2つ頼んでくれた。
だけど、どうやら飲むペースを落とす気はないらしく――。