彼は、理想の tall man~first season~
「ただ、身体的なコンプレックスは、本人の気持ち次第で、上に転ぶか下に転ぶか――それが自身の幸せに反映されるから」
「・・・・・・」
「本当に恋がしたいんなら、」
そこで、タクシーがマンションに到着して、中條氏がタクシー代を払ってくれて、降車した。
「あの、なんだかすみません」
「――ん?」
「タクシー代」
「いや、誘ったのは俺の方だから」
それでもなんだか申し訳なくて頭を下げると。
「まだ、ちょっと話せる?」
そう聞かれた。
首を縦に頷いた私に、あっちに行こうかと、マンションの敷地内の公園に向かって歩き出した中條氏。
その途中にあった自販機の手前で、何か飲む?と、聞かれ。
ただ、それくらいは私に払わせて欲しくて、私は中條氏と自分の分の缶コーヒーを無理矢理買った。
ブランコに座って、いい歳した大人が2人――。
「いただきます」
街灯の光をほんの少し感じ、夜風に当たりながら、コーヒーを飲み始めた。
微糖の私とブラックの中條氏。
足で軽くブランコを揺らしながら、その微妙な距離感を、私はなんだかこそばゆい――なんて思っていた。