彼は、理想の tall man~first season~

「美紗ちゃんは、学生時代アルバイトとかしてたの?」

「え? あ、はい。尚輝の稼ぎが良かったんで、私も躍起になって掛け持ちでしてました」

「へぇ、意外」

「昔から――金銭的な面では、気が引けてたんですよ」

「ん?」

「父の稼ぎって言ったらおかしいですけど、お給料をいくらもらっているか、子どもの頃なんて解らないじゃないですか」

「うん」

「うちは双子だから、小さい頃から余所の人に、お金がかかって大変ねって、良く言われて」

「あー、そういうイメージは、強いかもね」

「父親の職業柄、お金に困ることなく多分育ててもらっていたとは思うんですけど」

「うん」

「高校とか大学とか、家にお金があったとしても、掛かるお金は2倍だから。自分達で出来る限りのお金は稼いで、やりくりしてたんです。でも大学生の頃は、家賃とかは出してもらっちゃってましたけど」

「そっか、でも偉いな。尚輝も美紗ちゃんも、学生時代から」

「そうですかね」

「なかなか出来ることじゃないよ。やらなきゃいけない状況ならまだしも。そうでもない状況なのに、あえて自らっていうのは、なかなかね」
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