彼は、理想の tall man~first season~

「ねぇ、出だしの音程って、」

「出だしは、この音です」


そんな会話が漏れ聞こえ、彼女はポーンと数回ピアノを鳴らした。

その音に合わせて、「あ~」とか、テノール歌手のように発声をし始める藤本に、彼女はクスクスと笑っている。


本当に一緒にいて飽きない野郎だと、感心する。

彼女も藤本のノリに合わせるように、音を上げてピアノを鳴らす。

調子が本格的に乗ったらしい藤本は、更にそれに合わせて発声練習をし始めた。


凛とした中にも、ピアノを弾いている時の彼女は、特別な、普段とは違った独特の優しさを身にまとうように見える。


音楽の先生とか、本当に似合いそうだと、この前話したそれについての会話を思い出した。


まあ、容姿を鑑みると、CAも合いそうだとは思うけど。

学校とかでああいう風にピアノを弾きながら――という方が、俺には容易く想像が出来た。



「明るそうで、良い子そうじゃん」


彼女を見つめていると、彼女と藤本を見ていた長山が急に視線を寄越した。

不意な言葉であったが、不意だからこそ、思わず頬がふっと緩んでいた。


「中條は、結婚は考えてないのか?」
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