償いノ真夏─Lost Child─


少年に見惚れていると、彼の眉間に寄っていた皺がより深くなった。


「──なに?」

少年は怒ったような口調で、小夜子に問い掛ける。

ハッとして、慌てて首を振る。


「あ、ご、ごめんね。かってにお庭のぞいて……。でもさみしそうなお顔してたから……」

そう答えると、少年は目を丸くした。

「よそ者がめずらしくて、見に来たんじゃないの?」

「よそ者……?んん、よくわからないけど」

「ちがうの?じゃあ、お父さんの悪口もいわない?」

「お父さん?きみのお父さんは悪いひとなの?」

「ちがうよ。でもこの村の人は、お父さんはよそ者で、よそ者の子供だからってぼくのこといじめる」

少年の声は震えていた。小夜子は何となく、彼が弟の夏哉に似ている気がした。

「いじめないよ。ね、みんながいじめるなら、わたしと遊ぼう」


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